「プリキュアで学ぶ統計学」のような何かを書きたいと思った。さしずめ「ポケモンで学ぶ統計学①ジニ係数」といったところだろうか。
できればシリーズ化したいが、僕のちっぽけな知識ではあっという間に知識(とネタ)が出尽くすと思う。南無。
前置きはともかく、ジニ係数を使ってポケモンの種族値格差を計算してみたいと思う。
ジニ係数とは
ローレンツ曲線と(0,0)地点から(1,1)地点までを結ぶ線(y=xの直線)の間の図形の面積を2倍したものを指し、所得やエネルギー等の分配の不平等さを図る指標として用いられる。
と書いても意味不明なので、とりあえず「『完全に平等な場合のグラフ』と『現状のグラフ』がどれだけ違うのか」を示す数値だとざっくり理解しておいて頂きたい。
あるいはWikipediaのジニ係数の項目へのリンクを置いておくのでそちらで。
データの前提条件を決める
さて、ポケモンの総数は151・・・ではなく801匹。
初代には居なかったフォルムチェンジする種や合体する種、繰り出した瞬間に外殻をまとって種族値を変える種や島国に移住してタイプと種族値を変えた種など、ポケモンたちはとにかく見た目と種族値を変えようとする。※1ゲーフリさんは男子小学生の喜ぶツボをよく心得ているそのためどの形態の種族値を採用するのかについて決めておく必要がある。
というわけで、今回の計算では以下のようにした。
①ジニ係数の計算には種族値合計を使用する
優遇不遇を分けるのが種族値の「合計」ではなく「配分の仕方」であるのは間違いないが、何を持って良配分とするかを決めるすべが無いので種族値合計で代わりとする。※2配分に加えて特性も優遇不遇を決める重要な要素である。種族値合計は高いのに配分が酷すぎて使い物にならなかったバイバニラがゆきふらしを獲得した途端手のひらを返すようにレートで活躍しだしたことからもそれが伺える。
少々強引ではあるが、「与えられたものを上手く活用できないのは本人の努力不足」というスタンスで行こうと思う。必要なのは結果の平等ではなく機会の平等である。
②戦闘外でフォルムチェンジをする場合は、最も種族値合計が高くなるものを採用する
ロトムやキュレム等がこれに該当する。フォルムチェンジをすることで種族値合計が高くなるのであれば、当然にそちらの形態になって戦闘すると考えられるからである。
なお、フォルムチェンジの代表格であるデオキシスを始めとした殆どの戦闘外で行うタイプのフォルムチェンジでは、種族値配分とタイプが変わるだけで種族値合計は変わらない為上記以外のポケモンでは問題とはならない。※3余談だが、幻のポケモンの一角であるケルディオは特定の技を覚えることで「かくごのすがた」にフォルムチェンジし、タイプと見た目が変わる。がしかし、なぜかこの際種族値合計も種族値配分も一切変わらないのである。覚悟とは何だったのか。
③とくせいにより種族値が変化する場合、戦闘形態のものを採用する
これに当てはまるのはサンムーンで追加されたメテノ、ヨワシ。ボールから出した直後に特性によって一時的に種族値を変える。
「戦闘形態のもの」と書いたのは、ヨワシは特性によって強化→HPが減ることで弱体化なのに対してメテノは特性によって弱体化※4リミットシールドによって防御寄りの種族値になってるだけなので、合計種族値こそ下がっているが正確には弱体化してるわけではない→特性解除で強化 と真逆の性質を持つからである。
そしてもう1つ、ヒヒダルマのダルマモードを弾く目的もある。こちらもダルマモードになることで合計種族値が上がるが、半ばネタのような存在なので通常状態のものを採用した。※5とくせい:ダルマモードはHPが半分以下になることでタイプと種族値を変えるもの。高速物理アタッカーが特殊高耐久アタッカーになるというのは一見面白いが、フォルムチェンジ時点でHPが半分なため多少耐久が上がったどころで次の一撃で大抵死ぬ。しかも素早さが大幅に下がるため抜かしていた敵に抜かし返されて2連撃を食らって死ぬ。とろくでもない。
④アローラのすがたは考慮しない
アローラのすがたのポケモンはカントーからアローラに渡った際に環境に適合したという設定なので、アローラの固有種とはみなさず、新種のポケモンとしてはカウントしない。
これを考慮すると、姿こそ変わらないがほぼ全地方の池に生息しているコイキング等大勢のポケモンについても同じ措置を取らなければならなくなって収集がつかない為である。
Excelで累積相対度数の表を作る
こちらが今回使う生データ。合計種族値以外はいらないので削除する。
まずはソート機能を使って種族値の低い順に並び替える。最弱のポケモンなはずのコイキングより弱いポケモンが7匹も居ることがわかる。
続いて累積人数と累積相対人数を出す。1行につき1匹のため、累計人数は1,2,3,4,…802と増えていく。
相対累計人数は累計人数を全体の合計=801匹で割ったもので、このポケモンが下から数えて何%の位置にいるか※6100をかけていないので正確には%ではない。何て言うべきなのだろうを示す。
最後に累積種族値と累積相対種族値を出す。根本的な計算の仕方は上の累積人数/相対累積人数と一緒。
最初のセルはヒマナッツの種族値の180、次のセルは180にルリリの190を加えて370、その次は370にコロボーシの194を足して・・・というように計算していく。
累積相対種族値は最終的に求まった全ポケモンの種族値合計で各値を割ったもの。
以上の作業によって「下から何%のポケモンが」「全体の何%の富(種族値)を保有しているか」が計算できた。
試しに表から「下位50%が全体の何%を保有しているのか」を見てみよう。累積相対人数が0.5になる位置は400匹目〜401匹目の間、この表で言うとバルビートとイルミーゼの間であり、その部分の累積相対種族値を見るとおおよそ0.388~0.389の間(青丸の部分)である。
このことから、ポケモンの下位50%は全体の富(種族値)のうち39%しか保有できていないことがわかる。
ローレンツ曲線を描いてジニ係数を出す
累積相対人数と累積相対種族値を用いてグラフを作る※7ローレンツ曲線を描く場合、グラフには散布図を用いると良いと、このような曲線を描くことが出来る。これをローレンツ曲線という。
完全に平等な場合=全体のN%が全体のN%を所有している場合、グラフの青色の線のようになる※8この線を均等分配線と言う。座標(0,0)と(1,1)を結ぶy=xの直線となるはずであり、多少なりとも格差があることがわかる。
完全に平等な時の直線(青色)と先程求めたローレンツ曲線(赤色)の間の部分の面積の2倍※9なぜ2倍するのかというと、このままだと最大値0.5となり、キリが悪いからである。2倍することでジニ係数の範囲が0~1となり、使いやすくなる。が平等との乖離度合いを表すジニ係数となる。
面積の求め方については雑な図を描いたので置いておく。
右下の部分は細かくすることでさきっぽの三角形と大量の横向きの台形に切り分けられる。各台形の上底、下底、高さは累積相対人数及び累積相対種族値とその前後の値から計算できるので、それらをポケモン数分計算して合算することで右下部分の面積が求まる。
具体的には、以下のような式を書いて下にビーっとドラッグしてコピーした。E列が累積相対人数、G列が累積相対種族値。
=(E3-E2)*(G3+G2)/2
全体&地方別ジニ係数
さて、上に示した方法で全ポケモン合計及び各地方別にジニ係数を求めて表にした。(小数点第五位で四捨五入)
ジニ係数 | |
全体 | 0.1498 |
カントー | 0.1391 |
ジョウト | 0.1562 |
ホウエン | 0.1619 |
シンオウ | 0.1483 |
イッシュ | 0.1366 |
カロス | 0.1490 |
アローラ | 0.1451 |
これらの値が高いかどうかについてだが、社会騒乱多発の警戒レベルが0.4、危険ラインが0.6とのこと※10http://top10.sakura.ne.jp/CIA-RANK2172R.htmlよりなので人の世に比べるとかなり平等であると言える※11収入の上限は理論上無制限だがポケモンの種族値は最大でも720なので、そうなるのは当たり前の話である。比べるほうがおかしい。
人の世と比べても仕方がないので、各地方で比較してみる。※12棒グラフの下を切るのは本来反則。某テレビ局の歪んだ円グラフと大差ないが今回は大目に見てやってほしい。
地方別に見ると、ホウエンの格差が大きくイッシュが最も少ない。最新作のアローラ地方はポケモン全体と比較すると格差の少ない地域であるといえる。
ジニ係数に関しては異常だが、せっかくなのでもう一つ、レートの守り神ガブリアスや種族値合計だけは凄まじいレジギガス、ゲーフリの頭がおかしくなって生まれた種族値合計1位のアルセウスなど、狂ったポケモンの多いシンオウが案外格差が少ないのが気になったので分析してみる。
これはポケモンを種族値合計順に並べ、その種族値を線で結んだグラフ。グラフ右上らへんがカクカクしているのは600付近と680付近に伝説・準伝説が固まっているからである。ちなみに、一番右上の急角度で飛び抜けているのはアルセウス。
このグラフを見ると、シンオウは全体的な種族値、特に500前後の層が厚いことがわかる。これは恐らくマンムーやリーフィア・グレイシアなどの追加進化組が大勢いるためと思われる。
逆に、ホウエンは全体的に種族値合計が少なく上位1割のみ他地方と同水準な為、ジニ係数が大きくなったものと思われる。
さいごに
バカげたことを真面目にやったので疲れた。
同じようにポケモンを学術的?に分析した本がポケモン公式から出ていたので結びに置いておく。
注釈
1. | ↑ | ゲーフリさんは男子小学生の喜ぶツボをよく心得ている |
2. | ↑ | 配分に加えて特性も優遇不遇を決める重要な要素である。種族値合計は高いのに配分が酷すぎて使い物にならなかったバイバニラがゆきふらしを獲得した途端手のひらを返すようにレートで活躍しだしたことからもそれが伺える。 |
3. | ↑ | 余談だが、幻のポケモンの一角であるケルディオは特定の技を覚えることで「かくごのすがた」にフォルムチェンジし、タイプと見た目が変わる。がしかし、なぜかこの際種族値合計も種族値配分も一切変わらないのである。覚悟とは何だったのか。 |
4. | ↑ | リミットシールドによって防御寄りの種族値になってるだけなので、合計種族値こそ下がっているが正確には弱体化してるわけではない |
5. | ↑ | とくせい:ダルマモードはHPが半分以下になることでタイプと種族値を変えるもの。高速物理アタッカーが特殊高耐久アタッカーになるというのは一見面白いが、フォルムチェンジ時点でHPが半分なため多少耐久が上がったどころで次の一撃で大抵死ぬ。しかも素早さが大幅に下がるため抜かしていた敵に抜かし返されて2連撃を食らって死ぬ。とろくでもない。 |
6. | ↑ | 100をかけていないので正確には%ではない。何て言うべきなのだろう |
7. | ↑ | ローレンツ曲線を描く場合、グラフには散布図を用いると良い |
8. | ↑ | この線を均等分配線と言う。座標(0,0)と(1,1)を結ぶy=xの直線となる |
9. | ↑ | なぜ2倍するのかというと、このままだと最大値0.5となり、キリが悪いからである。2倍することでジニ係数の範囲が0~1となり、使いやすくなる。 |
10. | ↑ | http://top10.sakura.ne.jp/CIA-RANK2172R.htmlより |
11. | ↑ | 収入の上限は理論上無制限だがポケモンの種族値は最大でも720なので、そうなるのは当たり前の話である。比べるほうがおかしい。 |
12. | ↑ | 棒グラフの下を切るのは本来反則。某テレビ局の歪んだ円グラフと大差ないが今回は大目に見てやってほしい。 |